平型、かまぼこ型、正方形型、長方形型の4種類の砥石の砥石はあらゆる状態の包丁の研ぎに対応できるように揃えたものです。これらの砥石で、はまぐり刃はもちろん、歪取り、厚み取り、部位による角度調節、部分研ぎなどができるのです。この砥石による作業が包丁の快適性を支えています。



黒名倉は長崎県の対馬地方の海で採れた黒い砥石で、柔らか目の砥石です。天然砥石の中砥に当たり、粒子が非常に均一なのが特徴です。人造砥石から天然砥石の仕上げに入る前に使用することで研ぎ目を揃え、研ぎ傷を浅くすることを目的としております。



現在30本を超える天然砥石を駆使し、研ぎをしております。天然砥石には刃物との相性があり、その刃物に合わせた砥石を選ぶことが必要になるからです。
またどのように使う刃物か、そして今までの使い方を見て研ぐことが大切で、それに対応するためにも多くの砥石が必要だと感じています。



最終仕上げとして中山産出のマルカも使用しております。いい砥石を知ることはいい研ぎにも繋がると考え、そして特徴を知ることもいい研ぎにつながると考えています。



左は新品の包丁の刃先です。薄い刃先に表裏から傷がつくため、欠けやすく、また抵抗が強い刃だといえます。右は同じ包丁を、天然砥石を駆使し仕上げた包丁の刃先です。傷はほとんどないため欠けに強く、滑らかな切れ味を得られます。また天然砥石の特徴は切り刃についた人造砥石の傷を消し、磨き、ムラ取り、濃淡を出すところにもあります。そのような相性のよい砥石で仕上げた刃物は切れ味を引き出すだけでなく、刃物の本質も引き出すと考えております。